CBDとは?-期待される効果、安全性、適切な使い方
さまざまなショップで見かけることが増えてきたCBD。メディアにも取り上げられるようになり、認知度が広がってきています。CBDはインナーケアやスキンケアに役立つ成分ですが、具体的にどんな効果が期待できるのか、副作用はないのか、知らないことは多いかもしれません。今回は、CBDについて知っておきたいことを分かりやすく解説します。
CBDとは、どんな成分?
CBDは大麻草に含まれる天然成分
CBDは、大麻草(ヘンプ)に含まれる天然の成分です。正式名称はカンナビジオール(Cannabidiol)と言い、CBDはその略称です。
大麻草に含まれる生理活性物質(からだの機能に影響を与える物質)は、「カンナビノイド」と呼ばれており、CBDはカンナビノイドの一種です。CBDのほかに、THCやCBN、CBGなど、カンナビノイドは100種類以上の物質が存在します。
CBDは合法なの?
大麻草に含まれる成分と聞くと、一番気になるのは合法かどうかという点だと思いますが、CBD自体は法律で規制されている成分ではありません。
大麻は違法な薬物として、「大麻取締法」という法律で規制されています。あまり知られていませんが、大麻取締法には、「大麻草の成熟した茎や種子は規制対象から除かれる」と書かれており、大麻草の部位によって合法か違法かが分かれています。
たとえば、ヘンプシードオイルは大麻草の種子を原料に作られた製品なので、大麻由来であっても合法です。
つまり、CBDが合法か違法かは、大麻草のどの部位から抽出したものなのかによって決まるのです(2023年2月時点)。大麻草の葉や花などの規制されている部位から抽出されたCBDは違法であり、そうしたCBD製品を所持した場合は罰せられる可能性があります。
日本で合法とされるのは、大麻草の成熟した茎や種子から抽出したCBDです。また、化学的に合成されたCBDも規制対象とされていないため、合法となります。
CBD製品を日本で輸入・販売するためには厚生労働省に書類を提出する必要があり、現在流通しているCBD製品はすべて厚生労働省の許可を得た製品です。
CBDとTHCってどう違うの?
大麻草に含まれるカンナビノイドの中で、“ハイ”になる精神活性作用があるのがTHC(テトラヒドロカンナビノール)です。THCは幻覚作用や記憶への影響があり、常習的な使用によって脳の萎縮が起こることが分かっています。
一方、CBDには有害な精神活性作用はなく、依存や乱用の可能性がないことが研究で確認されています。
なお、THCは「麻薬及び向精神薬取締法」の規制対象となっており、THCを含む製品はすべて違法になります。海外では、微量のTHCを含むCBD製品が合法になっている国もありますが、日本ではTHCは0%(検出限界以下)でなければ合法とみなされません(2023年2月現在)。海外からCBD製品を個人輸入する際は十分注意する必要があります。
CBDの効果と副作用
CBDが作用するメカニズムとは
人の体内には、もともとカンナビノイドが存在しています。植物由来のカンナビノイドと区別するため、体内に存在するカンナビノイドは「内因性カンナビノイド」と呼ばれており、アナンダミドや2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)などが知られています。
内因性カンナビノイドには神経系や免疫系などのバランスを整えるはたらきがあり、からだに存在する「カンナビノイド受容体」に結合することで作用を発揮します。
内因性カンナビノイドがからだの機能を調節する仕組みのことを「エンドカンナビノイドシステム」といいますが、CBDはこのエンドカンナビノイドシステムを利用して様々な作用を発揮することが分かっています。
つまり、からだにはもともとカンナビノイドが結合する鍵穴(カンナビノイド受容体)が存在しており、そのおかげで植物性カンナビノイドであるCBDが作用を発揮できるのです。
CBDにはどんな効果が期待できる?
カンナビノイド受容体は全身のさまざまな組織や細胞に存在しているため、CBDは幅広い効果を発揮する可能性があります。CBDの作用に関する研究は世界中で行われており、現在のところ、以下のような作用を持つことが確かめられています[*1, 2]。
- 鎮痛作用
- 抗炎症作用
- 不安の改善
- 睡眠の質の改善
- 抗けいれん作用
- ニキビの予防
精神・神経系への作用のうち、特に不安を改善する作用は多くの研究で確認されており、有効性が確実だと考えられています。一方、不眠症や慢性的な痛みに関しては十分なエビデンスがないため、効果があるかどうかはまだはっきりしていません。
CBDには抗けいれん作用があり、海外ではCBDを主成分とした難治性てんかん治療薬が承認されています。日本でも臨床試験が行われており、近い将来承認される可能性があります。
また、CBDには抗酸化作用や抗炎症作用があるため、インナーケアだけでなくスキンケアの成分としても注目されています。CBDを皮膚に塗った場合、皮膚のバリア機能の維持やニキビの予防、湿疹の予防などの効果が期待できると考えられています。
CBDに副作用はある?
CBDは副作用が少ないことが多くの臨床研究で確認されています。てんかんの治療として高用量(1,000mg/日)のCBDを使用した研究では、食欲減退や下痢、眠気などの副作用が報告されていますが、深刻なものではなく、頻度もそれほど高くはありませんでした[*3]。
サプリメントや食品としてCBDを摂取する場合、用量は5~20mg/日程度とはるかに少ないことから、副作用が発生する可能性は非常に低いと考えられます。
CBDの使い方と適切な使用量
CBDはどのように体内に取り込まれる?
CBDをからだに取り込む方法には、次のようなものがあります。
- 口から取り込む方法(経口摂取)
- 舌の裏の血管から取り込む方法(舌下摂取)
- 口から肺に吸い込む(吸入)
- 皮膚に塗る(経皮投与)
CBDを口から摂取する場合、口から胃を通過し、多くが小腸で吸収されます。吸収されたCBDは肝臓に運ばれますが、その際に化学的に変化する(代謝される)ため、全身に循環する割合(バイオアベイラビリティ)は6~19%とそれほど高くありません[*4]。
一方、舌下摂取や経鼻摂取の場合、CBDは血管から取り込まれ、肝臓での代謝を受けません。そのため、全身に循環する割合が高く、より効率よくCBDの効果を実感できると考えられます。
CBDを皮膚に塗った場合、皮膚に存在するカンナビノイド受容体に作用し、皮膚にうるおいを与えたり、肌荒れを予防したりする局所的な効果を発揮します。また、皮膚を通して吸収されたCBDが筋肉に作用し、炎症や痛みを和らげる可能性があることも研究で確かめられています[*4]。
どのタイプのCBD製品を使えばいい?
CBDを摂取する方法は複数あるため、製品のバリエーションも豊富です。それぞれの製品の特徴を理解して、自分に合ったものを選びましょう。
CBDオイル
舌の裏に直接垂らして舌下摂取したり、経口摂取したりするドロップオイルは、最も一般的なCBD製品です。他の製品と比較して、次のようなメリットがあります。
- コストパフォーマンスが高い
- 摂取量を調整できる
- CBD濃度のバリエーションが豊富
- 食べ物や飲み物に混ぜて摂ることもできる
どんなCBD製品を選べばいいか分からない場合は、CBDオイルから始めるのがよいでしょう。CBDの効果をすぐに実感したいなら、経口摂取よりも舌下摂取がおすすめです。
CBDサプリメント
CBDオイルと同じように経口摂取するタイプのCBD製品です。オイルと違い決まった量のCBDがカプセルに入っているため、用量を調節する必要がありません。
ただ、CBDオイルと比べてコストパフォーマンスが低い傾向があり、舌下投与できないため効果を感じにくい可能性があります。
食品、飲み物
グミやチョコレート、飲料水、お酒など、CBDを含む食品や飲み物は数多く存在します。CBDを美味しく手軽に摂取するにはぴったりのCBD製品です。
ただ、食品や飲み物に含まれるCBDの量はそれほど多くないため、CBDの効果をより強く感じたいならCBDオイルなどを選んだほうがよいでしょう。
電子タバコ
リキッドを加熱し、蒸気を吸引することで肺からCBDを取り込みます。いつでも手軽に使えるため、愛用している人の多いCBD製品です。
ただ、電子タバコから発生する蒸気には有害成分が含まれており、日本呼吸器学会から「使用を推奨しない」という提言が出されていることから、健康面のリスクを考えると他のCBD製品を選んだ方がよいかもしれません。
スキンケア製品
CBDを皮膚に塗ることで、皮膚や筋肉、関節に局所的な効果をもたらすことができます。肌荒れの予防など、スキンケア効果を期待したいならこのタイプのCBD製品を使うのがおすすめです。
CBDの使用量の目安はどのくらい?
CBDを摂取する方法や個人の体格・体質などによってCBDの効果は変わってくるため、CBDの推奨量ははっきりと決まっていません。
日本よりもCBDが広く使用されているアメリカでは、1回あたりの摂取量は20~40mgが平均的とされています。CBD製品のパッケージにはCBD含有量が記載されていることが多いので、その製品を使うと1回あたりどのくらいの摂取量になるのか確認してみましょう。
1日あたり300mgまでならCBDを毎日摂取しても安全であることが確認されているため[*5]、まずは少量から始め、効果が感じられるまで摂取量を徐々に増やしていく方法がおすすめです。
【参考文献】
*1 Arnold JC, et al.: Clin Transl Sci 2022, Online ahead of print.
*2 Baswan SM, et al.: Clin Cosmet Investig Dermatol 2020; 13: 927–942.
*3 Chesney E, et al.: Neuropsychopharmacology 2020; 45: 1799–1806.
*4 Mahmoudinoodezh H, et al.: Pharmaceutics 2022; 14: 438.
*5 Cunha JM, et al.: Pharmacology 1980; 21: 175-185.